NVIDIA GB10搭載AIスーパーコンピューター比較:DGX Spark、ASUS、Dell、HP製品の価格と性能

NVIDIA GB10チップを搭載したAIスーパーコンピューターが各メーカーから登場し、ローカルAI開発の選択肢が広がっています。本記事では、NVIDIA DGX Sparkに加え、ASUS、Dell、HPなどの類似製品について、その基本スペック、GPU性能、価格を詳細に比較し、AIモデル開発・実行における最適な選択肢を考察します。

目次


1. 基本スペックと性能比較

NVIDIA GB10チップを搭載した各社のAIスーパーコンピューターの基本スペックと性能を比較します。

1.1 NVIDIA DGX Spark

NVIDIAが開発した「パーソナルAIスーパーコンピューター」であるDGX Sparkは、当初「Project DIGITS」として発表され、大きな注目を集めました。コンパクトなMac Miniサイズの筐体に、高性能なAI処理能力を詰め込んでいます。

  • プロセッサ: NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip(20コアArm構成:10 Cortex-X925 + 10 Cortex-A725)[1][3]
  • GPU性能: 第5世代Tensorコア搭載、FP4精度で最大1 PFLOPS(1000 AI TOPS)[1][3]
  • メモリ: 128GB LPDDR5X 統合メモリ、273 GB/s帯域幅[3]
  • ストレージ: 1TBまたは4TB NVMe SSD[3][10]
  • ネットワーク: NVIDIA ConnectX-7 Smart NIC、10GbE RJ-45接続[3][6]
  • 電力消費: 170W[3]
  • サイズ/重量: 150mm × 150mm × 50.5mm / 1.2kg[3]
  • 価格: 4TBモデルが3,999ドル(約60万円)、1TBモデルが2,999ドル(約45万円)[5][7]

DGX Sparkの最大の特徴は、最大2000億パラメータのAIモデルをローカル環境で利用できる点と、プリインストールされたNVIDIA AIソフトウェアスタックによる即時利用可能なAI開発環境です[1][2]。また、2台のDGX Sparkをリンクすることで最大4,050億パラメータのモデルまで処理可能となります[6]

1.2 ASUS Ascent GX10

ASUSから発売されるAscent GX10は、NVIDIAのDGX Sparkとほぼ同一のハードウェアスペックを持つ製品です。

  • プロセッサ: NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip[7]
  • GPU性能: DGX Sparkと同様(1000 AI TOPS)[7]
  • メモリ: 128GB 統合メモリ[7]
  • ストレージ: 1TB[7]
  • 価格: 2,999ドル(約45万円)[5][7]

ASUS Ascent GX10はDGX Sparkの1TBモデルとほぼ同一の製品と考えられ、NVIDIAよりも同等仕様で安価に提供されている可能性があります[7]

1.3 Dell Pro Max with GB10

Dell製のGB10搭載モデルについては詳細な公式情報が限られていますが、以下の点が報告されています。

  • プロセッサ: NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip[8]
  • 価格: 先行予約クーポンの条件から2,500USD以上と予想[8]
  • 特徴: 電源ボタンが天面にあり、複数台を積み重ねたクラスタ構成が難しい可能性[8]

1.4 HP ZGX Nano AI Station

HPのZGX Nano AI Stationについても詳細な公式情報は限られていますが、他のGB10ベース製品と同様の性能が予想されます[9]

2. 価格比較分析

現時点での価格情報をまとめると次のようになります:

  • NVIDIA DGX Spark: 4TBモデル 3,999ドル(約60万円)、1TBモデル 2,999ドル(約45万円)[5][7]
  • ASUS Ascent GX10: 2,999ドル(約45万円)、ストレージ1TB[7]
  • Dell Pro Max with GB10: 2,500ドル以上と予想[8]
  • HP ZGX Nano AI Station: 公式価格未発表

比較対象として、以前販売されていたNVIDIA DGX Station V100は、アカデミック向けが440万円、企業・官公庁向けが565万円(いずれも税別、3年間保守含む)でした[4]。今回のDGX Sparkシリーズは、従来のDGX Stationに比べて大幅に低価格になっています。

3. 他の選択肢との比較

AIモデル開発や推論実行用のハードウェアとしては、他にも選択肢があります:

  • Apple Mac Studio M4 Max 128GB: 約554,850円。macOS環境が魅力だが、NVIDIAのAIエコシステムは使えない[7]
  • Framework Desktop Ryzen AI Max 395 128GB: 約299,850円と最も安価だが、GPU性能はGB10に劣る[7]

4. 各製品の特徴と差別化ポイント

各メーカーのGB10搭載製品は基本的なハードウェアスペックが類似していますが、以下の点で差別化されています:

  • NVIDIA DGX Spark: NVIDIAのAIソフトウェアスタック(TensorRT、CUDA等)が最適化されており、AIワークロード特化型[1][6]
  • ASUS Ascent GX10: NVIDIAと同等仕様でやや安価な可能性、ASUSブランドのサポート体制[7]
  • Dell Pro Max with GB10: デザインが異なり、クラスタ構成が難しい可能性があるが価格は安い[8]

5. 市場展開と入手可能時期

DGX Sparkは2025年7月よりAcer、ASUS、Dell Technologies、GIGABYTE、HP、Lenovo、MSI、NTTPCなどから提供予定で、現在予約受付中です[6]。日本での予約・出荷については現時点では未定という情報もあります[3]

6. 結論

NVIDIAのGB10チップを搭載した各社のAIスーパーコンピューターは、従来のAIワークステーションと比較して革命的に低価格となりました。基本性能はどの製品も同様ですが、ストレージ容量、ソフトウェアスタックの最適化、メーカーのサポート体制などで選択する価値があります。

最も費用対効果が高いのはASUS Ascent GX10や予想価格が安いDellの製品ですが、NVIDIAのソフトウェア最適化を重視するならDGX Sparkの4TBモデルが魅力的です。さらに、2台接続して大規模モデルを実行する予定があれば、ConnectX-7を搭載するDGX Sparkが適しています。

これらの製品により、従来はクラウドやデータセンターでしか実行できなかった大規模AIモデルがデスクトップ環境で利用可能になり、AI開発の民主化と加速が期待されます。


参考文献

  • [1] NVIDIA. “NVIDIA DGX Spark”.
  • [2] NVIDIA Developer. “NVIDIA DGX Spark”.
  • [3] NTT PC Communications. “AI推論PC『Project DIGITS』”.
  • [4] 株式会社HPC. “NVIDIA DGX Stationキャンペーン”.
  • [5] ITmedia NEWS. “NVIDIA、BlackwellベースのGB200を披露、新DGXシステムなど”.
  • [6] NVIDIA 日本公式ブログ. “NVIDIA、DGX SparkとDGX StationパーソナルAIコンピューターを発表”.
  • [7] GIZMODO. “NVIDIAのAIチップGB10を搭載したASUSのAIスーパーコンピューター「Ascent GX10」が登場”.
  • [8] Zenn. “NVIDIAの新チップGB10が搭載されたPCの予約クーポン配布中?”.
  • [9] TechRadar Pro. “Project Digits is now DGX Spark: Nvidia raises its price by 33 percent as HPE, Dell jump on petaflop mini AI bandwagon”.
  • [10] HPC TECH. “NVIDIA DGX Spark”.